眼科診療

黄斑疾患

黄斑とは

黄斑とは網膜の中心にある直径1.5mm~2mm程度の小さな部分で、視力に最も大事なところであり、ものの形、大きさ、色など光の情報の大半を識別しています。したがって、大変小さな部分なのですが、黄斑が障害されるとそれ以外の網膜に異常がなくても視力が著しく低下します。また、網膜の下には網膜色素上皮という一層の細胞や脈絡膜という血管に富んだ組織がありますが、黄斑が正しく働くためにはこれらの組織も正常である必要があります。

黄斑

黄斑の病気

黄斑に異常が起こると次のような症状が起こります。

(1)変視症:網膜が腫れたり、液体が溜まると網膜がゆがみ、中心部はゆがんで見えます。
(2)視力低下、中心暗点:真ん中が見えなくなり(中心暗点)、視力が低下します。
(3)色覚異常:色が分からなくなります。

黄斑の病気

自覚症状の自己チェック法

このような格子状の表を用いて、片目ずつ見え方のチェックをします。 表の中央の白い点を見つめて、ゆがみや明るさを確認する。

自己チェック

代表的な黄斑の病気は、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症による黄斑浮腫、糖尿病黄斑浮腫、黄斑上膜、黄斑円孔、などです。

加齢黄斑変性

年齢とともに網膜色素上皮の下に老廃物が蓄積してきた結果、直接あるいは間接的に黄斑部が障害される病気です。

加齢黄斑変性の分類

加齢黄斑変性の分類大きく分けると萎縮型と滲出型の2つの種類があります。
萎縮型は網膜色素上皮が徐々に萎縮していき、網膜が障害され視力が徐々に低下していく病気で、残念ながら萎縮型には現在のところ治療方法はありません。

滲出型は異常な血管(脈絡膜新生血管)により網膜が障害される病気です。異常な血管から血液成分が漏出し網膜が腫れたり、網膜下に液体が溜まったり、出血を起こすことで、網膜が傷害され視力が低下します。

いくつかの治療法がありますが、現在の治療の中心は薬物治療です。治療はなかなか難しく、視力が良くなることもありますが、正常になることはほとんどありません。

薬物療法と光線力学的療法

脈絡膜新生血管の発生には血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)が関係していると考えられており、VEGFを阻害することにより脈絡膜新生血管を退縮させる治療法です。当院で用いているVEGF阻害薬にはルセンティスR、アイリーアRという2種類の薬があり、いずれも目の中(硝子体腔)にまずは4週ごとに3回注射します。その後は定期的に診察をして、脈絡膜新生血管の活動性がみられれば、適切な間隔を設定し、再度注射を行っていきます。この目の中への注射が治療の第一選択となりますが、病型によってはこの注射と光線力学的療法(PDT)を組み合わせて行う事もあります。

PDTとは、1) 光に反応する薬剤を腕の静脈から注射した後、2) 病変部にレーザーを照射する、という2段階で構成される治療法で、この治療により正常な組織に大きな障害を与えることなく、新生血管を閉じることが可能です。最近の加齢黄斑変性に対する治療法の進歩は目覚ましく、当院では常に最新の治療法を提供してまいります。

網膜静脈閉塞症

網膜の血管が詰まって見えなくなる病気も比較的多く見られます。網膜血管の根本が詰まる網膜中心静脈閉塞症や網膜血管の一部が詰まる網膜静脈分枝閉塞症に分類されます。黄斑部に浮腫を起こしてくると視力が低下し、必要に応じてストロイドや抗VEGF薬の局所注射、網膜レーザー治療、硝子体手術などを検討します。

網膜静脈分枝閉塞症は治療しないでも自然に治ることも時々ありますので、何もせずに経過を見ることもありますが、網膜中心静脈閉塞症は予後が悪いことが多く、治療を行っても視力が改善しないことも度々あります。

網膜静脈閉塞症

黄斑上膜

黄斑部に膜が張ってきて、ゆがみが出たり、視力が低下します。治療方法は、硝子体手術によって黄斑上膜を除去することですが、あまり視力が落ちてしまうと手術をしても視力の回復が難しくなるので、早めの手術が望ましいです。手術後は、多くの場合、視力はゆっくりと回復していくことが多く、ゆがみも軽減しますが、完全に元通りになることは難しいです。

黄斑上膜

黄斑円孔

加齢に伴う硝子体の変化により黄斑に穴が空き、視力低下や真ん中が暗くなったなどの訴えで来院されます。まれに自然に治ることもありますが、基本的には硝子体手術が必要で、放置することにより網膜が痛んでいき、硝子体手術をしても治りが悪くなりますので、早めの手術が望ましいです。この手術においては円孔を閉鎖させるため、必ず眼内に空気やガスを注入し、術後は1-3日ほどのうつぶせが必要になります。多くの人は1度の手術で黄斑円孔は閉鎖し、視力も回復していきますが、回復具合はさまざまで、ゆがみが残ることは多いです。

黄斑円孔

治療

薬物治療

ステロイドテノン嚢下注射

糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症などによる黄斑浮腫に対して、ステロイド剤を眼球の後ろに注入します。注射後に黄斑浮腫は軽減することが多いですが、効果が不十分だったり、再発することもあります。

投与法について
目薬の麻酔で、消毒後、ステロイド薬を白目の部分から眼球の後ろに少量注射します。
副作用と合併症について
感染、眼圧上昇、白内障などの副作用が報告されています。
費用について
1割の方で500円、3割の方で1500円程度です。

抗VEGF薬硝子体内注射

加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症による黄斑浮腫、糖尿病黄斑浮腫、近視性脈絡膜新生血管に対して、当院では主にルセンティス®、アイリーア®を用いて治療を行っています。病気によって適切な回数、間隔での治療が達成できるよう心がけています。

投与法について

目薬の麻酔で、消毒後、抗VEGF薬を白目の部分から眼内(硝子体)に少量注射します。注射部位への感染を予防するため、術前後3日間ずつは抗生剤点眼をさして下さい。

投与方法
副作用と合併症について
感染、眼圧上昇、視力低下、眼痛、網膜出血、血圧上昇、脳卒中などの心血管閉塞が報告されています。
費用について
健康保険適応であり、高額療養費制度も利用することができます。費用は、70歳以上の方は、窓口での上限があり、1割負担—12,000円以下、3割負担—44,400円以下、でそれ以上は窓口負担はございません。70歳未満の方(3割負担の方)は約55,000円です。

25G硝子体手術

25G硝子体手術白内障手術と同様に硝子体手術の進歩も目覚ましいものがあります。硝子体カッターも高性能となり、直径0.5mmというより小さい創から手術が可能となりました。眼内照明や眼内の観察方法も改良されてきており、より安全な手術が可能となってきております。

硝子体手術の適応として、黄斑部手術(黄斑上膜や黄斑円孔など)や単純な硝子体出血などの比較的合併症が起きにくい手術から、難易度の高い網膜剥離、増殖糖尿病網膜症、増殖硝子体網膜症まであります。当院では上記の疾患に対し、日帰り硝子体手術を行っています。様々な理由で日帰り手術が困難な場合は出田眼科病院や熊本大学病院へ紹介させて頂いております。

治療スケジュール

局所麻酔ですが痛みはほとんどなく、30分~1時間程度の手術となります。

手術申し込み
通通常は申し込みから1ヶ月以内に手術を行っております。手術前には当院での下記術前精密検査の他、手術に際し体の病気が影響しないかどうかなど内科等の医師に問い合わせをさせて頂きます。
術前精密検査
手術を申し込みいただいた方には、手術に必要なデータをおとります。また、手術を受ける際に体に問題がないかをかかりつけ医に相談致します。
手術前の点眼
手術3日前の朝から手術当日までの間、抗菌剤の点眼をしていただきます。1回につき1~2滴を点眼してください。
手術当日
手術の約1時間前に来院していただきます。手術当日の朝食、昼食は通常通りでかまいません。心電図、血圧計など装着しますのでゆったりした服装で 来院してください。来院の際にはご自分で車やバイクの運転をしないでください。手術終了後、しばらく院内で休息していただいたのち、注意事項の再確認をおこないます。その後、保護眼帯を装着したまま、お帰りいただきます。
術後検診
手術翌日は朝一番の診察で予約をおとりしますので、保護眼帯をしたままご来院ください。手術翌日から眼帯装用も不要になりますが、目の状態が安定するまでの約1~3ヶ月間の点眼治療が必要となります。 硝子体手術の場合、視力が安定するまで2~3ヶ月はかかります。激しいスポーツ、飲酒、長期の旅行などは医師の許可が出てからにしてください。術後3日間、1週間後、2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後以降は適時、診察と検査を行います。
万が一、異常を感じた場合は決められた受診日以外でも早めに受診するようにしてください。

術後の合併症について

手術後は目が赤くなったり、コロコロしたりします。白内障手術と異なり、術後はしばらくかすみます。疾患によって異なりますが、硝子体手術の場合、視力が安定するまで2~3ヶ月はかかります。

また、場合によっては眼の中に空気やガスを入れて手術を終了しますので数日間うつぶせが必要になる場合があります。まれではありますが、術後網膜剥離、感染などの重篤な合併症を起こす危険性があり、再手術が必要となります。

費用

治療は全て保険診療で行い、手術の種類によって料金が変わります。
1ヶ月の医療費が高額になる場合は、高額医療保険が使える場合があります。詳しくはスタッフまでお問い合わせ下さい。